敵基地攻撃

昭和31229日衆議院内閣委員会

鳩山総理答弁船田防衛庁長官代読

 わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

昭和34319日衆議院内閣委員会

伊能防衛庁長官答弁

………誘導弾等による攻撃を受けて、これを防御する手段がほかに全然ないというような場合、敵基地をたたくことも自衛権の範囲に入るということは、独立国として自衛権を持つ以上、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではあるまい。そういうような場合にはそのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能であると私どもは考えております。しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起こりがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。かようにこの二つの観念は別個の問題で、決して矛盾するものではない………。

 以上の政府見解から、政府としての憲法解釈においては、攻撃を防御する手段が他に無いと考えられる場合という条件のもとで、「基地をたたく」ことは憲法上許されていると読める。

 そこでどのような事態を以て「攻撃」に該当すると判断するべきかということであるが、政府見解において「自滅を待つ」ということが憲法の趣旨ではないのであれば、すでに攻撃によって我が国へ被害が生じた場合、即ち誘導弾が着弾してしまった場合だけとは考えられない。

 相手によって発射あるいは投下された第一の銃砲弾や爆弾、または誘導弾等が着弾してから敵基地を叩いたところで、相手がそもそもそれ以上我が国に対する攻撃を行う意図がなかったのであれば、我が国からの攻撃は防衛に対して意味をなさない。

 よって少なくともそれより前の段階、つまり誘導弾や砲弾等が我が国に向かって飛翔しており、それが我が国に着弾し被害を及ぼすと考えられた時点で、敵基地への攻撃が認められるべきだろう。

 さらに言えば、相手が我が国に対する攻撃を準備していることが明らかになった時点、例えば誘導弾等が発射台に装填され、発射準備が整った時点での攻撃も可能にするべきであろう。むしろ敵が一度の攻撃しか想定していない場合には、この状況で敵基地を叩かなければ、我が国に対する攻撃の防御には寄与しない。

 よって私としては、敵基地に対する攻撃要件として以下のものを提案する。

第一段階

・我が国に対する攻撃の準備あるいは表明が為された場合

(攻撃の予告、発射機に対する我が国に被害を及ぼすと考えられる誘導弾の装填、砲の指向、我が国を攻撃することが確実視される航空機の出撃等)

第二段階

・相手により砲弾や誘導弾が発射され、それが着弾した場合には我が国に被害を与えると想定される場合

第三段階

・現に攻撃が行われ、我が国に被害が生じた場合

 但し第二段階以降に関しては、敵基地を攻撃することは既に発射された砲弾や誘導弾等による攻撃を防御するというよりも、それに続く第二撃以降の攻撃を防御するための攻撃となる。

 なお提示した政府見解においては、基地を叩くことにより想定される結果によって、攻撃方法の制限はしていない。よって弾道ミサイルに核弾頭を搭載し、敵基地に対して攻撃を行うことも憲法上可能だと思われる。

 この場合、攻撃の対象となった基地の面積や周辺の状況にもよるが、周辺の市街地などにも被害が及ぶことが想定される。とはいえ、敵の攻撃を防御するのにその基地を叩くことが必要であり、かつ当時の状況で他に適当な手段がないのであれば、それもまた憲法上許されると解釈すべきである。

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