自衛力の限界
昭和42年3月31日参議院予算委員会
佐藤総理答弁
………わが国が持ち得る自衛力、これは他国に対して侵略的脅威を与えない、侵略的脅威を与えるようなものであってはならないのであります。これは、いま自衛隊の自衛力の限界だ。………ただいま言われますように、だんだん強くなっております。これはまたいろいろ武器等におきましても、地域的な通常兵器による侵略と申しましても、いろいろそのほうの力が強くなってきておりますから、それは、これに対応し得る抑圧力、そのためには私のほうも整備していかなければならぬ。かように思っておりますが、その問題とは違って、憲法が許しておりますものは、他国に対し侵略的な脅威を与えない。こういうことで、はっきり限度がおわかりいただけるだろうと思います。
昭和53年2月14日衆議院予算委員会提出資料
小林進委員要求
憲法第9条2項が保有を禁止している「戦力」は、自衛のための必要最小限度を超えるものである。
右の憲法上の制約の下において保有を許される自衛力の具体的な限度については、その時々の国際情勢、軍事技術の水準その他の諸条件により変わり得る相対的な面を有することは否定し得ない。もっとも、性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器(例えば、ICBM、長距離戦略爆撃機等)については、いかなる場合においても、これを保持することが許されないのはいうまでもない。
これらの点は、政府がかねがね申し述べてきた見解であり、今日においても変わりは無い。
昭和47年11月13日参議院予算委員会
田中総理答弁
自衛のため、防衛のため必要な力というものは、相手側が非常に高速になってくれば、こちらも高速にならざるを得ない。ただ、これは攻撃というのではなく、あくまでも自衛のため、防衛のため、受け身のものではございますが、いずれにしても、質が、相手の質がよくなれば、防衛力というものそのまま………これは相対的なものでございますから、相手が強くなればこちらも強くならなければいかぬということでございまして、質の面では相対して強くならなければならないということは、そのとおりだと思います。
昭和50年3月5日参議院予算委員会
三木総理答弁
自衛隊というものの限度はここだということは言い切れない。そのときの国際的ないわゆる客観情勢とか、科学技術の進歩とか、いろいろな条件がありますから、これだけが限度でございますということは困難であって、これはあんまり国の防衛というものを単に防衛力だけで狭く見ることはいけない。それにはやっぱり外交の努力もあるし、いろいろ総合的に国の防衛力を見ることが必要だというふうに思えますから、日本の防衛力のこれが一番適切な規模だというようなことは、私はそういうことは言えないと思います。
以上の政府見解から、自衛力の限界に関する条件や基準を箇条書きにしてまとめると、以下のようになる。
・他国に対して侵略的な脅威を与えないこと
・周辺国の軍備が強化されるなど、我が国に対する侵略に使われる恐れのある力が強化された場合には、自衛力も強化しなければならない
・他国の領土の潰滅的な破壊にのみ用いられる装備(ICBM、IRBM、長距離戦略爆撃機等)の保有は許されない
・科学技術の進歩や外交による努力といった面も防衛力な適切な規模の算定に加味する
即ち現状の政府見解では自衛隊の防衛力に対し、「ICBM、IRBM、長距離戦略爆撃機等」という装備の制限を除けば、その規模や装備の内容に具体的な制限が存在していないということになる。
これは他国の軍事力や我が国との関係の良し悪しが一定ではない以上、当然の帰結と言える。周辺諸国が我が国への侵略に使用できる装備を減らしていれば、それを用いた攻撃に対する防衛に必要な装備の質や数も低下し、逆もまた然りであるからだ。
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